地震予知・地震予測について

地震予測(予知)の現状
地震はどの程度予測できるのでしょうか。政府や企業が力を合わせて、過去の様々な地震事例から予測技術の向上を目指しておりますが、現在のところ正確な予測は難しいと言えます。
地震予測には大きく2つのアプローチがあります。
過去の地震記録を基に地震を予測する
現在の地震予測の多くが、過去の地震記録を基に、今後の地震の可能性を考えるものです。巨大地震は近い地域で一定の周期で起きることがあるため、これを基に予測を立てます。例えば2011年の東日本大震災が起きた東北地方太平洋沖は、400年〜600年周期で大地震が発生したとされています。最近話題の南海トラフ巨大地震も、政府の地震調査委員会は過去の例から「今後30年間に起きる確率を60~90%程度以上」としています。こうした歴史的大地震以外にも、ボーリング調査等で過去の地震や津波の跡を調べ、地震の頻度や周期いついてある程度の予測を立てることができます。
過去の事例を基にした地震予測の問題点は、「同じ周期で地震が来るとは限らない」点と、「これまで地震のなかった地域での地震予測ができない」ことです。
例えば400~600年周期で巨大地震が起きるとされる東北沖でも、次は400年後ではなく、10年後、20年後に起きるかもしれません「今後30年間に起きる確率を60~90%程度以上」とされる南海トラフ巨大地震も、次は200年後かもしれません。
また、「これまで地震のなかった地域」と言われても、前の地震が数千年前で記録に残っていない場合や、地表に現れない断層での活動では活発に起きていた場合などがあります。この場合は過去の事例から地震予測することはできなくなります。
過去の地震事例は参考にすべきですが、完全な予測ではないことを認識しましょう。
現在の現象を基に地震を予測する
過去の地震記録からのアプローチに対し、現在に現象から次の地震予測をたてる方法があります。この分野はまだ未開拓のため、様々な測量方法が実施されています。
例えば地震科学探査機構(JESEA)では、「測量工学的アプローチ」として、独自に電子観測点を設置し、人工衛星から日本全国の地表をリアルタイムで観測する技術で大地震発生の予測できる方法を提唱しています。また、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、南海トラフの海底地殻変動を連続リアルタイムで広域にモニタリングするシステムの開発を進めています。
このように、国レベルの他、企業各社も日本の今後の重要課題として、地震予測技術の研究に努めています。まだ高い精度で予測できるところまで研究は進んでいませんが、今後の進展に期待しましょう。
ナマズや動物、植物は地震を感知できるのか
地震予知には「宏観異常現象」と呼ばれる事例があります。因果関係の科学的証明まで至らないものの、地震の前触れではないかと言われる様々な現象のことです。地震雲の発生、発光現象、電子機器の故障などです。
こうした宏観異常現象の一つとして、地震発生前に動物が異常行動をとった、植物に変化が起きたなど、動植物に関わるものがあります。
ナマズと地震予知
地震予測で一番有名なものは「ナマズ」でしょう。江戸時代の記録「安政見聞誌」は、安政2年(1855年)10月に起きた大地震の記録です。同誌には、地震に先行してナマズが大暴れしたことが記述されています。ナマズは水中の微弱な電気を感じ取る能力が大変高いことで知られており、地震が起きる時のプレートの変動で地中の岩石が圧縮される際に発生する電気を感じ取っている、などの説もあります。
実は東京都水産試験場は1970年代から1990年代にかけて、ナマズと地震の関係を解き明かす研究をおこなったことがあります。水槽に入れたナマズを観察し、普段と違う異常行動と、東京都での震度3以上の地震との関連を調べたところ、87例のうち27例でナマズの異常行動が認められたそうです。
研究は16年続きましたが、地震の前兆とナマズの異常行動の関連は、はっきり認めらないとして打ち切られました。完全に無関係とまで証明されていませんが、関連性を証拠づける科学的証明には足りなかったところでしょうか。
電磁気を感知? 動植物の異常行動
他にも、地震の前に「犬や猫が落ち着かない」「ネズミやカラスが一斉に移動する」「季節外れの花が咲いた」など、動植物の異常行動、異常現象と見られる事例があります。地震の際に発生する電磁波を感知するためなど、様々な要因が考えられますが、いまのところ科学的な解明はできておりません。
気象庁は動植物の異常行動と地震の関連について、動植物の優れた感知能力の可能性を認めつつも、異常行動は地震以外の要因でも起こり得るため、現在の科学では因果関係を明確に説明できない、としています。
動植物の異常行動と地震との関連は、まだ未知の領域
地震の起こす現象の解明が進んでおらず、動植物においても未知の部分が残るため、地震前の動植物の異常行動は完全にデマや迷信とは言い切れません。多くの目撃事例のうち、ただの偶然や、別の原因によるものが含まれている可能性は高いですが、一部には地震予知の解明につながる要因もあるかもしれません。動植物の研究から地震予知技術が生まれる可能性も捨てることなく、期待していきたいですね。
地震と地震雲、電離層について
地震前の地震雲
大地震の前には地震雲と呼ばれる、通常とは違う形の雲が出現すると言われることがあります。さまざまな目撃事例がありますが、現在のところ確定した因果関係は見られておりません。
気象庁は地震雲について、地震が雲に影響を与える科学的なメカニズムは解明されておらず、現時点では地震の前兆として扱うことはできない、としています。
しかし、だからといって、地震は雲に全く影響を与えないとは言い切れません。以下の電離層の異常値について、地震との関連の研究が進められています。
地震前の電離層の異常
地中で起きる地震が上空の雲に与える影響は未確認ですが、大地震前には上空の電離層に異常値の発生が観測されています。電離層とは、地球の上空約60km~1000kmにある、太陽の紫外線やX線で大気の原子や分子が電離(電気を帯びた状態)した領域です。京都大学の研究グループでは、電離層で電子数の異常増加や高度低下が地震前の前兆として、そのメカニズムの解明について研究を進めています。
こうした電離層の変化が、地震雲や発光現象と呼ばれる現象につながっている可能性もありますが、今のところつながりは解明されておりません。今後の研究に期待しましょう。
地震予知・地震予測に関連する情報、参照サイト
- 国立研究開発法人 防災科学技術研究所
https://www.j-shis.bosai.go.jp/ - 地震調査研究推進本部事務局(文部科学省研究開発局地震火山防災研究課)
https://www.jishin.go.jp/ - 地震予知連絡会
https://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/index.html - 地震科学探査機構(JESEA)
https://www.jesea.co.jp/ - 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)
https://www.jamstec.go.jp/j/ - 気象庁:地震予知について
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq24.html - 気象庁:緊急地震速報について
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/index.html - 国立公文書館:安政見聞誌
https://www.archives.go.jp/exhibition/digital/tenkataihen/earthquake/contents/02/index.html - 国土地理院:地震とナマズの異常行動と電磁界変動(PDF)
https://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou52/03_06.pdf - 京都大学:なぜ大地震発生直前に電離層が降下するのか?(PDF)
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2025-05/web_2505_umeno-94b52c3ae331d6c01fac8f009e1967ce.pdf